コラム「帰りにちょっと寄っていくか?」で部下が乗り気にならないのには理由がある ~宴席における上司と部下のコミュニケーション[中編]
これが上司と部下の生きる道(32)
中尾ゆうすけ(日本メンタルヘルス協会 公認心理カウンセラー)
最近は、職場の「飲みニケ-ション」が衰退しているとよく耳にします。確かに、若手社員の考え方が大きく変わってきている――という一面もあるのでしょう。
しかし、若手社員に「なぜ上司と飲みに行きたくないのか」を聞いてみると、意外と原因は上司の言動にある場合が多いようです。今回、部下を飲み会から遠ざける三つのありがちな例について、傾向と対策を考えていきます。(編集部)
■上司と飲みに行きたくない理由
近年は、上司と部下で「帰りにちょっと寄っていくか?」という会話さえ少なくなってきたと言われている。
個人の尊重という観点からか、仕事は仕事、プライベートはプライベートというように切り分けられるようになってきた。
忘年会や新年会という、半分職場の行事的な位置づけでさえ、参加者が減る傾向にある企業は多い。

筆者がこれまで多くの新入社員に話を聞く中でも「できれば上司と飲みに行きたくない」と答える新入社員の割合は多い。
理由としては、以下のようなものが多かった。
(1)過去の武勇伝を延々と語られる
(2)「ゆとり世代」とひとくくりに扱われる
(3)どうでもよいことで説教をされる
(4)友人と行ったほうが楽しい
(5)お金がない
特に、上司の接し方に原因があるケース、(1)~(3)について、問題点と処方せんを考えていこう。
■過去の武勇伝は単なる自慢にならないように
【問題の所在】
(1)の武勇伝については、多くの上司は自慢話として語るケースが多い。また、過去の特別な状況下における武勇伝は、現代に通じない場合も多いものだ。
それでも優秀な部下は、その武勇伝の本質を見極め、「現代にどう生かすか」を考えることができ、(表面上は)喜んで話を聞いてくれる。
しかし、新入社員に近いような若者には、そこまでの能力はまだ無いため、単なる「大昔の自慢話」にしか聞こえない。
武勇伝を語るときは、出来事を語るのではなく本質の部分を語らなければ現代の役には立たないのである。

【処方せん】
逆に、失敗談のように自分の恥をさらすような話は、若い世代にもウケがいい。失敗とはいつの時代も原因は単純なもので、若い世代にも親近感が湧くからだ。
それが次の仕事のやり方への教訓となるのであれば、上司は時にはプライドを捨て、恥をさらす勇気も必要なのだ。
■「ゆとり世代」というだけで先入観を持たない
【問題の所在】
近年の若者は個性が豊かで、みんなが同じという扱いをされたくないと考える傾向にある。
その意味で、反感を持たれるものの代表が(2)の「ゆとり世代」という言葉だ。
上司が部下に対し、「やっぱりゆとり世代だから○○なのか?」というような言い方をされて、「そうですね」という若者はいない。なぜなら若者自身は“ゆとり世代だからどうだ”ということが分かっていないからだ。
自分たちにとって自分たちの常識があり、新入社員に近いほど社会の常識はまだまだ身についていない。それを頭から否定することをよろこんで受け入れる器はないのだ。
【処方せん】
相手を否定をしない会話術、そして諭すようにさりげなく常識を育てていく……これが上司の部下に対する役割でもある。

■説教は愛のある言葉で。叱るのは日常の指導の中で
【問題の所在】
(3)のように、宴席における「部下に嫌われる上司の行動」として、「説教」というのはどの職場でも耳にする。アルコールが入ることで、普段蓄積しているものがついつい出てしまう。
当然過去の出来事に対する説教であるため、部下にとっては「何を今更……」、「楽しいはずの宴席の場が……」となり、しらけた空気を作ることになる。
言い方次第ではパワハラといわれる可能性もあり、十分気を付けなければならない。
また、部下が快く説教を受けてくれるということはまずない。ただし、その言葉に部下に対する期待や愛情があれば、嫌な気分ではなく、素直に聞く姿勢ができる。
そのためには「説教」や「注意」ではなく、アドバイスというスタンスが必要だ。
【処方せん】
上司はアルコールの力を借りるのではなく、日常の指導の中できちんと叱るときは叱るという姿勢が必要だ。
特に「叱る」という行為は宴席で行うべきではないので、上司はくれぐれも気を付けたい。
また、過去の失敗を笑いのネタにするのもよくない。アルコールが入れば周囲もいつも以上に冷やかしたりしてしまう。
部下を笑いものにするぐらいなら、自身の失敗を笑いのネタにするぐらいが、宴席ではちょうどよいのだ。
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(次回 上司と部下の間に築かれた「真の関係」は、退職時に分かる ~宴席における上司と部下のコミュニケーション[後編] につづく)
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